行動経済学の有名な6つの理論 Part.2

資産形成

行動経済学とは

  行動経済学とは、経済学と心理学が融合された学問であり、人間の「 人々が直感や感情によってどのような判断をし、その結果、市場や人々の幸福にどのような影響を及ぼすのか 」を研究するものです。行動経済学は、世の中の経済行動に応用されており、マーケティングにおいては行動経済学を活かすことで、顧客の心理を的確に理解し、いかに買うという選択をしてもらえるかが重要になります。つまり、行動経済学の理論が活用される事で、顧客をより惹きつける戦略を展開できるようになります。

  例えば、「期間限定キャンペーン」や「全額返金保証」といったうたい文句は損失回避の法則を利用しています。その期間を逃したら手に入らなくなるかも…といった気持ちや、失敗を回避したいという気持ちを巧みに利用して、購買意欲をかき立てています。

  また、金融の世界にも行動経済学が生かされており、資産運用をする場合は「サンクコスト効果」に注意する必要があります。投資で損が出ている際に、早めに投資している分を引き上げて、これ以上損失が広がらない状態で損益を確定してしまうことを【損切り】と言い、これは投資をする上で合理的な対応策です。しかし、サンクコスト効果に陥っていると「まだ挽回できるかもしれない」という心理から適切な損切りができなくなり、結果的に損失を大きくする可能性があります。その為、このような事態を回避する為にも、損切りの基準は設けたり、投資に使える資金をあらかじめ決めておく等、感情に左右されることのない具体的なルールを決めておくことが大切になります。

家計見直しに特化したFP無料相談

ハロー効果

  ここではまず行動経済学の理論のうちの一つである【ハロー効果】についてご紹介します。「ハロー効果」は、英語で「halo effect」と表します。ハローと聞くとあいさつの「Hallo」と間違えそうですが、「halo」は日本語で「後光」や「円光」など、頭の後ろからさす光のことです。(日本語で読むとしたらハロなのかもしれません。)【ハロー効果】は、目立つ特徴が印象や評価に多大な影響を与えてしまう現象のことを言います。

  例としては、

・Aさんが有名大学を卒業しているということと、ビジネスパーソンとして優れているかどうかは本来関係のないが、実際に確認などをせずに、Aさんを優れたビジネスパーソンであると評価してしまう。

・英語ができることと、仕事ができることは本来関係のないことだが、実際にその能力を確認する事なく、英語のできる人を優れたビジネスパーソンであると評価してしまう。

  このように、ハロー効果によって、ある対象物や人を評価する際、目立つ特徴に引きずられるように、他の特徴についての評価までが歪められてしまうのです。そしてこれは良い評価だけではなく、悪い評価へと繋がってしまう為、非常に大きな影響力を持っているのです。

サンクコスト効果

  次に、【サンクコスト効果】についてご説明します。サンクコストの英語表記は「sunk cost」であり、これを和訳すると「コスト(費用)をサンク(沈む・失う)」という表現になり、いわゆる「埋没費用」とも呼ばれます。これは、ユーザーがこれまでに費やしたコストを無駄にしたくない、と強く思う心理に関わる理論になります。サンクコスト自体は企業や人々の活動において必要なものですから、必ず発生します。しかし問題なのは、サンクコストを支払ったことによる【それをどうにかして取り戻そう】とする心情になります。

  例えば、企業でいえば広告費や人件費が最もたる例です。広告費や人件費自体は、いずれにしろ回収できないサンクコストですが、その広告に効果がない、またその人材が給与やコストに見合った成果を出せないにもかかわらず、このままその状態が続いたらどうなるでしょうか?サンクコスト効果に影響されると、実る見込みのない投資を際限なく続けてしまう危険性があります。 その為、あらかじめ「○○円までは使ってよい」「○○時間までは教育にかけてよい」と決め、モノにも人にも際限ある投資を心がけることで、損失を最小限に抑えられるでしょう。

認知的不協和

  最後に認知的不協和についてご説明します。【認知的不協和】(cognitive dissonance)」とは、人の考えと行動の矛盾を別の考え方で正当化してしまう現象のことを言います。

  例えば、ダイエットをしているにも関わらず、【夜中にラーメンを食べると太ってしまう】と頭の中では理解していたとしても、【いやいや、食べたいものを我慢すると、ストレスで余計に太ってしまう】という考えで正当化する、といった現象がそれにあたります。「ダイエットしたい」と「夜中にラーメンを食べたい」という矛盾した2つの認知を協和している状態にするために、別の考え方が生み出されるわけです。このように私たちには考えと行動に不一致が生じているケースが多々あり、認知的不協和によって、自分の思考や行動に矛盾があるときに生じる不快感やストレスが生じてしまい、その不快感やストレスを軽減させるために認知や行動を変化させるのです。

最後に

  このように、人間が行動を行う以上、そこには【感情】や【欲望】が絡むことになり、特に資産形成に関する経験や知識が比較的乏しい人ほど、それによって引き起こされる損失や悪影響は大きくなってくるでしょう。そのため、初心者は長期投資を念頭に、多少の損失や市場の動きに敏感になりすぎることなく、冷静に資産を積み上げていく事が大切になっていきます。

  ※投資にはリスクがあります。必ず投資者自身の判断と責任において行ってください。

大人の金融勉強会

タイトルとURLをコピーしました