行動経済学の有名な6つの理論 Part.1

資産形成

行動経済学とは

  行動経済学とは、経済学と心理学が融合された学問であり、人間の「 人々が直感や感情によってどのような判断をし、その結果、市場や人々の幸福にどのような影響を及ぼすのか 」を研究するものです。行動経済学は、世の中の経済行動に応用されており、マーケティングにおいては行動経済学を活かすことで、顧客の心理を的確に理解し、いかに買うという選択をしてもらえるかが重要になります。つまり、行動経済学の理論が活用される事で、顧客をより惹きつける戦略を展開できるようになります。

  例えば、「期間限定キャンペーン」や「全額返金保証」といったうたい文句は損失回避の法則を利用しています。その期間を逃したら手に入らなくなるかも…といった気持ちや、失敗を回避したいという気持ちを巧みに利用して、購買意欲をかき立てています。

  また、金融の世界にも行動経済学が生かされており、資産運用をする場合は「サンクコスト効果」に注意する必要があります。投資で損が出ている際に、早めに投資している分を引き上げて、これ以上損失が広がらない状態で損益を確定してしまうことを【損切り】と言い、これは投資をする上で合理的な対応策です。しかし、サンクコスト効果に陥っていると「まだ挽回できるかもしれない」という心理から適切な損切りができなくなり、結果的に損失を大きくする可能性があります。その為、このような事態を回避する為にも、損切りの基準は設けたり、投資に使える資金をあらかじめ決めておく等、感情に左右されることのない具体的なルールを決めておくことが大切になります。行動経済学には、いくつか理論となるものが存在し、ここではその内3つを紹介させていただきます。

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プロスペクト理論

  1つ目は【プロスペクト理論】というものになります。プロスペクト理論とは、人間の【損失回避性】を説明したものになります。人間は損失することを極端に嫌うという性質があり、これを損失回避性と言います。

  例えば以下のケースで考えた場合、みなさんはどちらを選ぶでしょうか。

  1. 無条件で10万円もらえる
  2. 2分の1の確率で20万円もらえるか、1円ももらえない

  この場合、1の【無条件で10万円をもらえる】を選ぶ人が多いと言われています。実際にみなさんも1を選んだ方が多いのではないでしょうか。このように、人は確実に利益が得られる可能性がある場合、利益が得られない可能性がある選択肢を避ける性質を持っています。たとえ2を選んだとしても損失は生じないはずなのですが、損失を過大に捉えてしまうのです。

  このような特性を活かして、プロスペクト理論はマーケティングに有効活用されています。例えば、【いついつまでの期間限定半額セール!】や、【先着100名様限定で半額!】といった販促が、まさに損失回避性を利用した手法となります。これはお得に購入できる可能性があると、その機会を逃すことは「損だ」という心理が消費者に働くためであり、「得をしたい」よりも「損をしたくない」という気持ちの方が影響度が大きいというのが損失回避の法則です。

アンカリング効果

  次に【アンカリング効果】についてご紹介します。アンカリング効果(Anchoring Effect)の「Anchoring」は「「船の錨(いかり)を下ろす」「固着する」といった意味から来ており、アンカリング効果とは【最初に与えた印象的な情報がユーザーの中に留まり、最終的な意思決定の段階まで影響し続ける】といった心理効果を指します。

  ここで一つ例に挙げてみましょう。例えば、家電量販店で「通常価格10万円の洗濯機が、今ならセールで5万円!」という表示を見たら「お得な商品だ」と感じてしまわないでしょうか。先に「10万円」という価格が提示されているため、その数字に引っ張られて5万円という金額を「安い」と判断してしまうのです。しかし、その時実際に「洗濯機の相場と比較して安いのか」、また「その商品自体に5万円に見合う価値があるか」は分からないのです。このようにアンカリング効果とは、先に与えられた情報や数字に無意識のうちに判断を歪められてしまう【認知バイアス】とも言えるでしょう。アンカリング効果は、値段以外にもみなさんがよく目にするであろう売り文句の「当店限定」「本日限定」「売り切れ御免」などの情報によっても引き起こされますが、マーケティングにおいて数字の方がより強い印象を与える傾向があります。

現在志向バイアス

  続いて、【現在志向バイアス】の説明になります。現在志向バイアス(present bias)とは、将来の大きな利益よりも、今すぐに手に入る利益を優先させてしまうという心理効果になります。将来に得られる “大きな” 価値と、今すぐに得られる “小さな” 価値を天秤にかけた時、多くの人が後者を選択してしまうという人間の心理特性のことです。

  例を一つ挙げるとすれば、
  ・ 今すぐ、あなたに “10万円” をプレゼントします。

  ・ 1年後に、あなたに “50万円” をプレゼントします。

と言われたら、明らかに後者の50万円のほうが得なのは分かりきっているにも関わらず、多くの人は【今すぐの10万円】 と 【1年後の50万円】 のどちらを取るのか迷う傾向にあるのです。「未来の喜び」というのはなかなか想像しにくいのに加えて、手に取れる場所に利益が現れた際、人の心は素直に動き行動します。このように人の行動は合理的ではなく、心理的な作用に大きく影響を受けるということが現代の行動経済学においては当たり前になっています。

最後に

  このように、人間が行動を行う以上、そこには【感情】や【欲望】が絡むことになり、特に資産形成に関する経験や知識が比較的乏しい人ほど、それによって引き起こされる損失や悪影響は大きくなってくるでしょう。そのため、初心者は長期投資を念頭に、多少の損失や市場の動きに敏感になりすぎることなく、冷静に資産を積み上げていく事が大切になっていきます。

  ※投資にはリスクがあります。必ず投資者自身の判断と責任において行ってください。

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